Machynllethの小さな宿での出来事。

ある朝、彼は朝食の時間に起きたのだけれど、いつまでたってもコンチネンタルの朝食を作ってくれるオーナーが顔を見せない。不審に思った彼は一階のパブに降りてみた。
まだ開店していない朝方のパブのカウンターには、そのパブの常連の男がいた。彼はその男にオーナーがどこにいるのかを尋ねたのだけれど、その男も、オーナーを探しているのだと言う。

彼は自分も約束の時間なのにオーナーがどこにもいないことを話した。すると、その常連の男は彼に1ポンドのコインを5枚渡し、そこの角を曲がったところにうまいコンチネンタルを食わせてくれる店があるからそこにいけばいい、と彼に言う。

彼は、なぜここの従業員でもない男が彼に朝食を食べるだけのコインをくれるのかと聞いた。彼の問いかけに対してその常連の男はすぐさまこう答えた。
「そりゃあ、俺は奴の友人だからさ」
そんな十分すぎる回答は聴いたことが無いと思いつつ、まだ少し寒い朝の田舎道を彼は歩き出した。良くも悪くもこんなに気持ちのい朝を迎えるのはひさしぶりだと思いながら。


その宿のオーナーが彼の前に顔を出して「朝は酔いつぶれてしまってて起きれなかったんだ、わるかったな。」と笑顔で彼に言うのは、その日の昼過ぎのこと。

チェックインもチェックアウトもないおんぼろ宿での出来事。