蝉時雨が聞こえてた

大阪のどこか

別に何をするでもなく、バイクを降りて、キーを抜く。そしたらキーホルダー替わりにつけていた折れたキーの先が、思いのほか鋭利になっていて、僕の右手の親指を切り開いた。久しぶりに外部に流れ出した血の赤さは、自身がとても奇麗な事を主張しながら、みるみる僕の指にはめた銀の指輪と僕の親指を濡らしていく。それがとてもカッコよくて、たまらなくて、僕は誰かにそれを自慢したくて周りを見渡すのだけれど、僕の周りには誰もいなかったみたい。それでも、誰かにその奇麗なところを見せたいと思ったから、また寂しい気持ちになったりした。ああ、今日はなんでもない日なんだな、そして今日は一人ぼっちだなって思いながら。