無題

僕は僕の世界の中で僕という主人公を演じる俳優。

そして、僕は君の世界の中の脇役。

僕は時々は君の友達で、時々は嫌われ者。恋人になる事だってあるし、悪者かもしれない。もしくはあなたの世界ではあなたの家族かもしれない。

僕らの世界は互いに少しずつ繋がっているけど、その核の部分は決して交わらない。それは僕達の自我であって、君が僕になれないように僕が君になれないということ。


僕らはその中で生きている。


君が僕の世界を変えるときがあるように、僕達は変化し続けている。その中で、時には君が僕のことを忘れて、僕は君の世界で僕を演じられなくなってしまうこともあるし、僕だって、今まで出会った人全てが今も僕の世界の中にいるわけじゃない。


でも、ほとんどの場合は、僕らはお互いをそんなに簡単には忘れてしまうことは無いようで、僕が君に長い間あっていないときも、君は僕の世界の中で君を演じ続けている。それは君も同じ事。僕は君の世界の中で、君の思うように僕を演じている。


君の中の僕は君の中で同じまま。時々変わることもあるけど、僕の世界の中で僕が変わっていくほど早く変わってしまったりはしない。
だから、いつか君が君の世界の中で嫌っていた僕は、もう僕の世界の僕とは違っているかもしれない。同じように、君が好きだった君の世界の中の僕は、もう今の僕の世界の中の僕とはまるっきり別人かもしれない。でもそれも君にとっては同じ僕。

僕らはそのことをいつも分かってはいる、けれど一度僕らが創ってしまった僕らの世界の中の脇役達は、簡単には変わらない。そして、僕らは僕らが想像する以上の速さで変わり続けて行く。それは誰にとっても同じこと。


だから君に聞いてほしい。君の世界と僕の世界がもう一度繋がるとき、どうか、どうかそのことを忘れないでいてほしい。僕が僕を演じるように、君は君を演じ続けていてほしい。変わってしまっていても、なにも変わっていなかったとしても、君であることを僕に示してほしい。

それがどんな形であっても別に構わない。もし君が僕を裏切るときがあるとすれば、僕もまた君を裏切っているのだから。そして君が嬉しく思ったときは、きっと僕も嬉しく思っているのだから。